正式名称
改訂長谷川式簡易知能評価スケール
略語
HDS-R(Hasegawa dementia rating scale-revised)
評価者
医師 作業療法士 言語聴覚士 臨床心理士 etc
評価場所
ベッドサイド 検査室 etc
目的
認知症のスクリーニングとして使用します。
対象者
主に認知症が疑われる高齢者に行います。
特徴
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は日本で最も普及している認知症の簡易評価スケールです。得点によって重症度の分類が可能です。
メリット としては、ベッドサイドで行うことができ、短時間で簡便に評価が可能なことです。見当識、注意、記憶、語の流暢性を評価することができます。
デメリットとしては、言語的な質問が多く、失語症患者では評価が困難なことです。
(失語症者の知能テストとしては、レーヴン色彩マトリックス検査が用いられることが多いです。)また、図形の模写や文章作成の課題が含まれず、動作性の認知機能が評価できない欠点があります。
判定
HDS-Rの最高得点は30点で、20 点以下を認知症、21 点以上を非認知症とした場合に、最も高い弁別性を示します。
重症度別平均得点
- 非認知症:24.45 ± 3.60
- 軽度:17.85 ± 4.00
- 中等度:14.10 ± 2.83
- やや高度:9.23 ± 4.46
- 高度:4.75 ± 2.95
各重症度の平均得点はあくまでも認知機能の評価であり、認知症の診断に際しては、内科学的診察や神経学的検査、画像検査、髄液検査、血液・尿検査などを総合的に行う必要があります。また、うつ病でも認知機能は低下するため、精神機能も把握する必要があります。
HDS-R 各問題の目的
各問題にはそれぞれの目的があります。合計得点も大事ですが、低下のみられた問題がどこなのか、またどのような機能が低下しているのか把握することも大切となります。
- 問題 1 年齢といった自己の認識、現実見当識
- 問題 2 年、月、日、曜日などの日付の見当識
- 問題 3 場所の見当識
- 問題 4 聴覚性記憶 (即時記憶の評価)
- 問題 5 注意(計算)
- 問題 6 注意(逆唱)
- 問題 7 聴覚性記憶 (近時記憶の評価)
- 問題 8 視覚性記憶
- 問題 9 語の流暢性(前頭葉機能に関連)
検査用紙はこちら↓
http://www.medica-site.com/special/img_special069/hasegawa.pdf
評価の方法(手順)
・年齢
満年齢が正確に言えれば 1 点与えられます。数え年を考慮し2 年までの誤差は正答とします。
生年月日が言えても年齢が合っていない場合は0点となります。
・日時の見当識
「今日は何年の何月何日ですか?」と質問します。
「今年は何年ですか?」「今日は何月ですか?」「今日は年日ですか?」等と別々に聞いても良いです。
年については、和暦、西暦どちらでも正解とします。
・場所の見当識
「私たちがいまいるところはどこですか?」と質問します。
ヒントなく自発的に答えられれば 2 点となります。
もし正答できなかった場合は、約 5 秒おいてから、「ここは病院ですか? 家ですか? それとも施設ですか?」と質問し、正しく選択できれば 1 点となります。
もし病院であれば正式名称でなくても本質的に場所を理解できているようであれば正答とします。
・3 つの言葉の記銘
「これから言う 3 つの言葉を言ってみてください。後でまた聞きますのでよく覚えておいてください」と教示します。
3 つの言葉はゆっくりと一語ずつ区切って提示します。
1 つの言葉ごとに1 点ずつ加点されます。
・計算
「100 引く 7 はいくつですか?」「それからまた 7 を引くといくつになるでしょう」と質問します。
検査者は、最初の引き算の答え93を繰り返して言ってはいけません。注意しましょう。
・数字の逆唱
「私がこれから言う数字を、逆から言ってください」と教示します。
数字はゆっくりと、約 1 秒ぐらいの間隔をおいて教示し、言い終わったところで逆から答えて頂きます。
できれば、「これからいう数字を反対から言ってみてください。たとえば、1 2 3 を反対から言うと」 というように練習問題を入れると良いです。
3桁で失敗したら、そこで打ち切ります。
・3 つの言葉の想起
「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください」と教示します。
3 つの言葉のなかで、自発的に答えられたものは各 2 点とします。
もし答えられない言葉があった場合は、少し間隔をおいてからカテゴリーヒントを与えて、正解が言えれば 1 点とします。
ヒントを与えるときにには「動物と乗り物がありましたね」と一度に言ってはいけません。 自発的に答えるのを待ち、「桜」という答えしかできないときにすぐにヒントを 与えようとせず、「他にもありましたね」というように、少し時間を与えるようにします。
・5 つの物品記銘
物品は1つずつ名前を言いながら目の前に置くようにします。
実際には「これは時計ですね」といって目の前に置き、「これは鍵ですね」というように1つずつ確認しながら 置いていきます。
5つ並べ終ったときに1つずつ確認し、「これは?」と聞いて「時計」と反応したら、次に「これは?」と聞いて 「鍵」と答えてもらうようにします。
そして、その5つを見せたまま、「これからこれを隠しますから、何があったか言ってください。 順番はどうでもいいですから、思い出したものから言ってみてください」と教示します。
また、最後の1つが出てこないような場合であっても、すぐに終わりにするのではなく、なるべく本人に 思い出してもらうように,少し待ってみるくらいの余裕を持って検査を行います。
5つの物品は何でも良いのですが、本人にとってなじみのない物は避けるようにします。
また、5つの物品は、相互に無関係の物にすることが重要であり、たとえば「鉛筆」「消しゴム」のように関連性のある物はさけるようにします。
・野菜の名前(語の流暢性)
「知っている野菜の名前をできるだけたくさん言ってください」と教示します。
具体的な野菜の名前を検査用紙の記入欄に記入し、重複した物を採点しないように注意します。
途中で言葉に詰まり、10 秒程度待っても次の野菜の名前が出てこない場合には、そこで打ち切ります。
下記の文献やサイトを参考に記事を作成しました。
http://www.medica-site.com/special/img_special069/hasegawa.pdf
リハビリナースvol.06 no.01 2013